いつかのMerry Xmas
店の外に出て、ケータイを取り出してから私は気がついた。

――タクシー会社の電話番号、知らない――

イチローを置いて店に戻ろうとする私を、イチローの手が強く掴む。

独りで立ってられないってわけでもないくせに。

「俺をここで凍死させる気?」

「あ、そんな素敵なこと思いつかなかったわ。
 タクシー会社の電話番号聞いてこようと思って」

途端、イチローは自分のケータイを取り出した。

「誰かさんのお陰で、タクシーの番号入ってる」

「――へぇ、そう」

誰かさんが私であることには気付かないふりで私は相槌を打つ。
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