Snow Princess ~雪の華~

リリーは王家付きの魔女である。


魔女の役目とは、疫病や厄災が起きたときに薬を作ったり、土地を回復させること。

被害が甚大なときには、その土地に赴いて解決することもあるが、大体は城の中だけで済む。

そもそも、魔法自体があまり国民に認知されていないために、隠れてやることが多いのだ。


今日も、そんな仕事の終わりの後だった。


リリーがシャーマに呼ばれて書斎に行くと、書斎は大変なことになっていた。

散らばる本。
転がる椅子。
落ちて割れた鏡。

椅子の足が傷だらけなところを見ると、鏡を椅子で割ったのだろうか。
リリーは絶句した。


「何よこれ…」

「とりあえずいろいろ言う前にオレを直してくんね?」


リリーは古代の言葉を紡ぐと、手をパン、と叩いた。
すると割れた破片は消え去り、鏡は昨日までと同じ状態になっていた。

それをシャーマが拾い上げ、元通りに壁にかけた。


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