Snow Princess ~雪の華~
「王女? 王女様だとは露知らず、ご無礼を」
彼は変わらぬ微笑みを返しながら、驚いたふうを装った。
相手が父であるとは少しも思わず、ブリッ子モード全開で笑顔を振り撒く。
「そんなことありませんわ!
私は城を出されてしまって…今、帰るところなんです」
マリンは熱っぽく彼を見上げる。
だが、彼の方はどこか遠くを見つめていた。
「あの?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと…」
「どこか具合でも悪くて?」
「いいえ、大丈夫です。しかし、私も急ぎの身…」
彼はマリンを見下ろし、整った眉を下げた。
「名残惜しいのはやまやまですが、家臣も馬もいない今、早々に発って足を捕まえた方が良さそうです」
「そんな! 出会ったばかりですのに」