さくら木一本道

(龍巳)「……勇次…なんだあの危険動物は…」



(勇次)「ま、まぁ… あれがさくらだ…」



(龍巳)「ふーん…」



龍巳は起き上がり、服に付いたホコリをはらい落としてまたその場に座り込んだ。

そして、柄にもなく真剣な顔で勇次に言うのだ。



(龍巳)「……で? さくヤンとはどういう関係なんだよ」



(勇次)「イヤ、マジでさくらは俺ん家で居候してるだけであって…」



(龍巳)「だからその理由は?」



(勇次)「だから言ったろ? さくらは別世界の人間で…」



(龍巳)「それがおかしいんだって!! そんなの信用出来るか!! 俺はそこまでバカじゃないぞ!? 勇次はなんで信用出来るんだよ!?」



「お前はそこまでのバカだよ」と言いたいところだが、龍巳にマジで来られると勇次はどうも言い返せない、それだけ龍巳は本気で勇次のことを心配しているからだ。



(勇次)「……俺だって最初は信用しなかった… だけどな、「一本桜」で初めてアイツにあった時、アイツは気絶する位ショックを受けてたんだ。アイツの持ってたストラップだって…」



(龍巳)「……」



(勇次)「それにあんな顔されたら…」



勇次が思い出した記憶は、さくらが見せていた笑顔だった。

顔は笑っているが心の中で悲しみを殺している、そんな悲しい笑顔だ。



(勇次)「……」



(龍巳)「……勇次はさくヤンの話を信用してんだな?」



(勇次)「あぁ」







しばらく黙ったあと、龍巳は口を開いた。



(龍巳)「……分かった…俺もさくヤンを信じる」



(勇次)「え?」



(龍巳)「勇次がさくヤンを信じてるなら俺も信じる」



(勇次)「龍巳…」



確かに、龍巳はバカで空気も読めない奴ではあるが、それを差し引いても余りある良いやつなのだ。

でなければ親友になどなりはしない、



(龍巳)「あ、そうか、さっきさくヤンがキレたのも俺がさくヤンの事を信用しなかったからだな?」



まあ、バカには代わりないが、



(勇次)「いや… それは違うと…」



(龍巳)「さくヤンに謝らなきゃな」



(勇次)「さくらがキレたのはお前がくだらないダジャレを…」



(龍巳)「そうと決まればさくヤンに謝りに行こうぜ」



(勇次)「……あぁ… もう勝手にしてくれ…」



龍巳と勇次は二階のさくらの部屋に向かった。

そして龍巳はさくらの部屋の前に立ち、襖を叩く



‐ドンドンッ!!!‐



(龍巳)「さくヤン!! さくヤンの話を信用しなかった俺が悪かった!! 許してくれ!!」







‐シ~ン…‐







(勇次)「返事ないな…」


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