シルバーウルフ -Is this love?-
俺たちの洋服は擦(す)りきれた誰かのオサガリ。


毎食の飯は粗末なワンプレート。








俺たちにケチ臭く

自分に太っ腹な神父。








孤児施設に似つかわしくないスポーツカー……、いや……、スーパーカーを何台も所有していた神父。



施設内のシャッター付きガレージにミニカーのコレクションみたいにそれらは並んでいた。







サーキット代わりの夜の環状高速。


道交法を完全無視のレーシング。


施設の俺たち孤児も、何度か助手席に座ったこともあった。



施設の手伝いに貢献したときや、成績を優秀に修めたときの“ご褒美”の助手席。




スピード狂の精神病的な世界。



全身を押さえ付ける強烈なG重量。




真っ赤なボンネット。




地を這(は)うような低重心。



フェラーリはロケットみたいに突っ走った。




あまりの速さに、発達途中の脳ミソの映像解析がスローになる。




見えるもの全ての視界が白黒になるときさえあった。






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