華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
ずっと楓が俯いたまま聞いていると、
「じゃあ次は鈴堂くんですね。」
という声が聞こえた。
楓はカタン、と席を立ち口を開いた。
「鈴堂楓です。
誕生日は1月27日で、好きな物は…」
楓は言うことに困った。
“好きだ”と言えるものが思い浮かばなかったのだ。
「好きな物は…ないです。
嫌いな物は、分からない…です。
よろしくお願いします。」
好きな物がなければ、嫌いな物もない。
“大切な物”と聞かれればエリカだと思ったかもしれなかったが、人と触れ合ったこともなかった楓にはそういった感情がよく分からなかった。
楓の自己紹介が終わると、クラスはシーンと静かになった。
それでも、担任の宮元先生が
「じゃあ次は渡辺くんね。」と言うと、圭祐のほうに皆の視線が行った。