華〜ハナ〜Ⅰ【完結】
楓のところには人を殴る音は聞こえない。
でも蓮は、一人で不利なのにも関わらずあまり殴られない。
“人を殴る”
ということには辛い記憶がある楓には抵抗のあるものだったが、街灯のおかげで少しだけ見える四人の顔が楽しそうで、キラキラしていた。
だからいつの間にか見入ってしまった。
ボーッとしていると、楓の目の前に蓮が立っていた。
蓮の頬には殴られた跡がある。
「なんで………」
楓は呟くように言った。
なんで自分に喧嘩をしている所を見せたのか
なんで喧嘩をするのか
なんで…笑っていたのか
なんで蓮は笑顔なのか
たくさん、聞きたいことがあった。