ラプンゼルの指輪
そう聞くと、何を言ってるんだ、と眉根を彼女は寄せた。
「それはお前の名前じゃないか」
あぁと紗羅は合点がいった。
彼女は勘違いとかそんなんじゃない。
本当に自分を紗夜だと思っているのだ。
瓜二つな紗羅を、紗夜と間違えないほうがおかしいのだろう。
今となってはみんな紗夜のことを忘れてしまって、まわりは紗羅のことしか知らない。
紗羅が双子だったことを知らないのだ。
だからとっさに口走っていた。
「あぁそうだ紗夜だ。けど3年前からの記憶がなくてアンタのことも知らねーんだ」
嘘をつくのには馴れている。
けどこの時ほど胸が潰されるような傷みが走ったことはない。
ただ彼女を傷つけたくないがためについた嘘。
これが後々、彼女を傷つけるだなんて今の紗羅には知るよしもない。
