ラプンゼルの指輪
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一体何なんだ。
『きっとさーちゃんなら、きっと…あの世界を救ってくれると思うから…』
『紗羅、あの"世界"を"あの人"をお願い』
2人して一体何を伝えたいのか。
似たようなことを、姉も母もどうして自分に託すのだろう。
紗羅は前を見据えると、大きな溜め息ををついた。
賑わう街並みは、まるで中世のヨーロッパだ。
馬車だって街道を通り抜ける。
道沿いにお店を出して、みんなが客引きをして、競い合っていて、服装だって見慣れないものだ。
お伽話の国に迷い込んでしまったのだろうか。
(ふっ、我ながらお茶目さんっ)
「…ってちがーうっ!!」
意味の分からない1人突っ込みをしながら、また重たい溜め息をついた。
すれ違う通行人は皆、まるで異質なものでも見るように紗羅を見た。
(服装か?服装なのか?お前たちのほうがよっぽどおかしいだろーがっ!)
と、言いたい気分なのだが、もちろんそんなこと言えるはずがない。
確かにここでは異質に違いない。
現に制服を着ている人が人っ子1人いないのだから。
しかもだ。
急にこの場に現れてしまったのか、みんな遠巻きに円を作るように囲んでいる。
(なんだ…この珍獣みたいな扱いは)
噂する街人A、B、Cに耳を傾けた。
『漆黒よ。漆黒の髪の毛』
『まさか"ラプンゼル"の?』
『いや見てみろ、瞳の色が紫じゃない』
うーんと、紗羅は唸った。
この髪の毛も目立つのかと、腰下まで伸びた髪を弄った。