ラプンゼルの指輪
周りを囲む人々は、みな一様に鮮やかな色の髪をしていた。
黒なんて髪、1人もいない。
(目立つわけだ)
だがこの髪は切るわけにはいかないし、染めるわけにもいかいのだ。
唯一の紗夜と繋がっている証だから。
とにかく、これだけ観察してみてわかったことは、ここが日本ではないということだ。
母はこれを予期していたのだろう。
日本ではないとわかって、ここまで冷静になれるなんて我ながら凄いと思う。
(ここが"あの世界"か)
母が姉が、揃って言ったあの世界。
さて、これからどうしようか。
と、紗羅がもくもくと考えている時だった。
馬の蹄の音が響き渡った。
(なんだ?)
それはどんどんこちらに近づき、道を開けるように、人々が右に左にとそれぞれ避けた。
馬は一つ嘶くと、紗羅の目の前で止まった。