新撰組~変えてやる!!

•4 闇は闇へと…


 翌朝のこと。葵は、土方にもらった喪服に身を包んでいた。その服の色は芹沢の言葉にあった漆黒の闇を連想させる。

 「…行かなきゃね。」

 重たい体を無理やり奮い立たせ、葵は皆が集まっているであろう広間へと足を運んだ。

 「…おはようございます。」

 予想に反し、隊士はまだ一人もおらず、その場にいたのは、既に亡骸となっている芹沢と新見だけだった。葵は芹沢の隣に座った。

 「…聞いてください、芹沢局長、新見副長…俺、“総隊長”になりました。……本当に不思議ですよね。いきなり来た“俺”の存在が、こんな地位にある。それなのに、この組を作ったあなた達は、もういない。ごめんなさい…」

 葵は右肩に手を置き、ギュッと握った。

 “人のいのちは儚きもの…小宮、思うままに生きろ。儂は、そうした。儂の生き様もまた一興だったろう?”

 「ぇ…?」

 “そんな顔すんなって!!なっ!?芹沢さんが後悔してねぇように俺も後悔してねぇよ。じゃあな。…頑張れよ……”

 葵の耳には芹沢と新見の声が確かに聞こえた。幻聴だったのかもしれないが、早朝だというのに、葵の頬を暖かい風が通り抜けたのは、事実だった。

 「……ありがとうございます…」

 葵は通りすぎていった風に呟いた。あえて振り返りはしなかったが、2人が微笑みかけてくれているようで葵は、ギュッと握っていた手を自身の胸に当てたのだった。



 葬儀は、盛大に行われた。見回りの時間も今日だけは、誰も出動しなかった。葬儀が終わり、葵はまだ開けていなかった自分宛ての包みを開けてみる気になった。

 「ぁ……」

 中には、局長が着るはずの白地に黒のダンダラ模様の入った隊服と瑠璃色の珠のついた簪が入っていた。

 「この簪…あの時の………」

 葵は、芹沢と2人で町に出掛けた時のことを思い出していた。

 
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