新撰組~変えてやる!!

 山崎は、いつの間にか震えていた葵の体をさらに強く抱きしめた。いつまでも止まらない涙は山崎の肩の辺りに染みを作っている。

 “…何、やってんだろ…私…何で、丞に抱きしめられてるんだろ…”

 葵は冷静になってきた頭の片隅で考えた。いまだに視界はぼやけている。冷静に自分の置かれている状態を把握し、葵は内心溜め息をついた。

 “…みっともない…体が、震えてる…それに…着物、握り締めているのか?…てか、自分から丞に抱きついてんの!?”

 葵はパッと握り締めていた着物を放した。そして、その手でさり気なく山崎の胸を押した。

 「…丞…もう、平気だから。放して?」

 葵はできる限り涙声にならないように声を出した。それでも涙声になっていたが、目を瞑ることにする。

 「……」

 「…丞?」

 葵は、ピクリとも動かない山崎を不思議に思い、声を掛けた。顔が見えないため、どんな表情をしているのか分からない。しばらくして、山崎が名残惜しそうに離れていった。

 「…目、赤くなってもぅたな…俺、手拭い濡らしてくるさかい、ここで待っとくんやで。」

 「…へ……?」

 山崎は駆け出していってしまった。葵は楠木の死体に近付いた。すでに冷たくなっていたが、表情は思っていたよりも柔らかく、葵は頬に1滴だけついた血を親指で拭い取った。

 「…やっぱり、変わらないのかなぁ…私が動けば動くほど、死んでいく人が増えちゃうのかな………何で、私がここに居るのかな…それでも…」

 葵は霧で見えない遠くを呆然と見つめていた。と、突然目元に冷たい布が押し当てられた。

 「っ!?…冷たいよ、丞…」

 「しゃあないやろ?目、腫れてもしらんで?」

 葵は冷たい布をギュッと握り締めた。

 “…それでも…絶対に変える。これ以上、大切な仲間は、もう失わない…”




 9月26日、後に“間者一掃”と称されるその日は朝霧の立ち込める少し肌寒く感じる日だった。

 
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