新撰組~変えてやる!!
「うっせぇな……ほっとけ…」
土方は小さく舌打ちし、まだ降り止まない雨を眺めた。
「…雨、止みませんね…」
「あぁ…そうだな…」
土方は外を見つめたまま、夢うつつな状態で返事をした。葵は湯気が出ているお茶を飲もうと湯呑みを持ち上げ、口に付けた。
「熱っ!!」
葵は火傷してしまったのか、ヒリヒリとしている舌をべっと出した。
「……葵は、猫舌なのか?」
斉藤の問いに頷くことで肯定の意を示す。すると、正面から声を押し殺し、笑う土方の姿が目に入った。葵はそれにムッと頬を膨らまた。
「何なんれすか!!笑うなんへ…」
ちゃんと喋れていないことが、さらに笑いを誘ってしまったようで、土方はついに声をあげて笑い出した。
「もうっ!!笑わないれくだひゃいよ!こっちだって必死なんれふ!」
「ああ…すまねぇ…。しっかし、お前にも無理なものがあったとは意外だったから。」
葵は土方の言葉にただ首を傾げた。困惑する葵に追い打ちを掛けるように斉藤が“確かに…”と言った。
「剣の腕は、俺や沖田さんに勝つほど。隊士達からの人気も上々。短期間で幹部の仲間入り。…異例な事態だ。そんな異例なことをやってのけた葵が猫舌だとは、思っていなかったからな。」
斉藤の言葉に土方が大きく頷く。その行動に、葵はますます困惑した。
「兎に角、意外だった。それだけだ。」
そう言って土方は熱いはずのお茶をごく普通に飲んだ。
「俺にだって、苦手なものくらいありますよ…」
葵は無意識に自分の右肩を撫でた。