新撰組~変えてやる!!
「雫さん…この組の隊士と対等に眼を飛ばし合うなんて、普通、女性のすることじゃありませんよ…?」
突然聞こえた声に、隊士と雫が葵の方へと振り向いた。そして葵が視界に入った途端に、隊士はばつが悪いといった顔に、雫は勝ち誇ったような笑みを見せた。
「小宮!!」
「そ、総隊長…」
葵はその対称的な声に小さく溜め息をついた。
「…お仕事、ご苦労様です。少し、離れていてくださいませんか?この方は、俺の知り合いの方です。」
「も、申し訳御座いません…!!」
慌てて下がる隊士の様子に苦笑いしてから、葵は雫に視線を向けた。
「あまり平隊士達をいじめないでやってくださいね。彼等にも悪気がある訳ではありませんので…」
「はい、はい…まぁ、威勢の良さは認めてやらんこともないしな。」
少しどころか、かなり遠くにいる隊士を睨み付けるようにして見る、目の前の雫に葵は内心、溜め息をついた。
「ほら、飾り紐だ。梅が作ったんだ。」
葵は雫の手の平に乗った2本の紐をまじまじと眺めた。1本は、黒と濃紺を基準とした組紐に1本の銀糸が組み込まれたもの。もう1本は紅色と緋色を基準とした組紐に1本の金糸が組み込まれたもの。
「…それが、新しく買った刀か?」
雫の視線は、葵の左腰に吸い込まれていた。葵は頷いた。
「へぇ~…綺麗な刀だね。」
葵は嬉しくなって笑った。不思議なほど雫の言葉はスッと胸に落ちる。雫がそれぞれの刀に紐を括り付け、満足げに笑った。
「ありがとうございます。すっごく嬉しい…」
「い~や、小宮には結構世話になってるしな。喜んでもらえて嬉しいよ。」
葵はつけてもらった紐を一撫でした。
「じゃ、梅を家で待たせてるからさ。アタイはもう帰るよ。」
「…気を付けてくださいね。」
葵はタッタッと小気味良く走り去っていく雫の背を見送り、自室へと足を向けた。