新撰組~変えてやる!!
「すまんな…ほな、借りるわ。……ありがと、葵。」
山崎は数秒後には、寝息をたてていた。
「ふぅ…。さてと、木刀でも借りようかな…」
葵は素早く着替え、庭へと出た。空は、少しずつ明らみ始めている。葵は深呼吸し、道場へと向かった。
葵が道場を覗くと、誰もいなかった。それに安心して中に入ろうとすると、後ろから声が掛かった。葵は驚き、勢い良く後ろを振り返った。
「さ、斉藤さん…」
葵の後ろから声を掛けたのは斉藤であった。相変わらず無表情な斉藤に、葵は苦笑いした。
「こんなところで何をしている。」
「木刀でも借りて、素振りしようかと…斉藤さんこそ、いかがなさいました?」
斉藤は、“俺も素振りだ。”と答え、道場へと入った。そして木刀を2本取り、そのうちの1本を、未だに入り口辺りで突っ立ったままの葵へと渡した。
「ぁ……ありがとうございます。」
「いや……。」
葵が木刀を受け取ったのを確認した斉藤は、道場の中心辺りで素振りを始めた。葵も道場の中へ入り、邪魔にならない辺りで素振りを始めた。
「……小宮…賭けをしないか?」
唐突に、斉藤が葵に話し掛けた。
「“賭け”ですか?」
聞き返した葵に、斉藤は小さく頷いた。
「試合をして、勝った方言うことに1つ、従う。それだけだ。どうだ、乗るか?」
葵は、少し考えるような素振りをしてから頷いた。葵は、斉藤の目の前に移動し、下段に木刀を構えた。道場内の空気が張り詰め、2人の息づかいだけが聞こえる。呑気な、誰かの声が聞こえたのと同時に、葵と斉藤は動いた。
「…ッ…………」
ガッと、木刀同士がぶつかる鈍い音が道場内に響いた。葵は、思っていた以上の衝撃に驚いた。対する斉藤は、無表情なままだった。葵は、鍔迫り合いを避けるために後ろへ跳んだ。葵は、斉藤に微笑んだ。が、次の瞬間には斉藤への攻撃を仕掛けていた。