新撰組~変えてやる!!

 葵は部屋で新しい着物に着替えていた。

 「あ、葵!?なんで此処におるんや!?」

 いきなり聞こえてきた声にも、葵は振り向かずに着々と着替えた。その間にも、その声の主ー山崎は、“今は、斉藤はんの所におるはずや!!”とか“副長に知らせるべきやろか?…いや、あかん!!そんなことしたら葵が…”などと独り芝居をしていた。

 「葵、風呂に入るか?副長にはなんとかゆうたるさかい。それに、誰も近づかんように見張っとく。髪に血、ついたままやったら気持ち悪いやろ?」

 着替え終えた葵は頷いた。いつの間にそんな考えになったのかは分からないが、風呂に入れるのは、有り難かった。

 「よっしゃ。なら、副長の部屋に寄ってから行くで?」

 山崎は、葵が頷いたのを確認してから土方の部屋に向かい、歩き出した。


 「副長、山崎です。後始末、完了しました。やはり、長州の者の犯行でした。」

 「あぁ…ご苦労さん。」

 葵は、襖ごしの会話に耳を傾けていた。

 「それから、副長…。葵、風呂に入れたんで?ええですやんな?」

 「あぁ。その辺は、任せる。」

 葵は、許可が出たことに、ホッと胸を撫で下ろした。

 「ほな、風呂借ります。続けて俺も入りますさかい、よろしゅう!」

 山崎は、葵を立ち上がらせ、風呂に連れて行った。




 「葵?眠れそうか?」

 風呂に入った葵と山崎は布団を並べて、それぞれの布団に入っている。

 「……ダメかもしれない…。」

 葵は布団の中で、震えている右手をギュッと握った。と、そこに暖かい何かが触れ、葵の手を包み込んだ。

 「大丈夫や。」

 葵の手を包み込んでいませんのは、山崎の左手だった。ふと山崎の顔を見れば、心配そうな顔をしていた。そういえば、以前にも同じようなことがあった。まだ、幼かった頃に。




 
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