トレイン


今まで二人とも電子機器に弱く、このご時世にパソコンすらお互い持っていなかったのだが、今年に入ってリカが、思い出をちゃんと残して置く為、といって突然デジカメを買おうと言い出した。初めはインスタンストカメラで十分だといっていた僕だが、結局、二人でお金を出しあって一台のデジカメを買った。普段はリカがそのデジカメを持ち歩いているが、会うとお互いを撮りあって遊んでいた。

「今年はいっぱい写真が撮れるな」

「そうだね」

リカは景色を眺めながら笑顔を浮かべた。いつもと変わらないリカの眠そうな笑顔。しかし、リカの眼は何処か箱根の山を越え、ぼんやりと遠くを見つめている気がした。

最近どこかリカの様子がおかしい。突然、仕事を辞めたいと泣きながら電話してきたり、二人でいる時も黙ってぼーとしている時が多くなった。元々、気持ちの浮き沈みが激しリカだったが、このところ特に気持ちが不安定になってるようだった。

しかし、その理由はハッキリしていた。リカを不安定にさせていたのは僕だった。


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