トレイン
その電話があったのは2ヶ月前。僕が遅番終わりで眠りにつことした午前3時頃だった。僕は突然のリカの話に頭が働かず、ベッドの上で身体を起こした。
「どうした急に?」
「ユウトの結婚相手はアタシじゃないと思う」
リカの声は小さく、そして冷静だった。それだけに僕は少し焦った口調でいった。
「どうした。何かあったのか?」
「ううん。何もないよ。アタシいろいろ考えてたの。ユウトとの結婚のこと。アタシずっとユウトと結婚するものだと思ってきた。でもね、最近わからなくなっちゃたの」
まるで別れ話のような口調だった。結婚という話は出ても、付き合ってから今までお互い別れ話を切り出したことは一度もない。自分自身、リカと別れるなんてこれっぽっちも考えたことはない。動揺で心臓の鼓動がバクバクと脈打つ。僕は恐る恐るリカに訊いた。
「他に好きな奴ができたのか?」
短い沈黙。つい数秒前までやすらかな眠りにつくところだったのに、一気に死刑台の前に立たされた気分になる。リカは静かにいった。
「そうじゃないよ」
僕はひとまず胸を撫で下ろした。一拍深く息を吸ってリカに訊く。
「ならどうして?」