神様の暇潰し? 〜 The love story of mask human 〜
「今こそ、契約の時!!」
陽奈が手に握っているロザリオを前に突き出す。その瞬間、光と風が陽奈と俺を包み込んだ。光と風の殻に包まれた俺たちは、不思議と不安にならなかった。むしろ安心してその光景を見守れたくらいだ。それくらいその包んだ光と風は優しげだったのだ。
「契約。我は主、中村陽奈。汝、我を主と認めるか?」
「契約。我は従者、黒瞬。汝、我を従者と認めるか?」
俺と陽奈の問いはほぼ同時だった。
俺の言葉は勝手に口から出たものだ。きっと陽奈が言っている契約文も、こうして勝手に紡がれているものだろう。決して二人とも契約の手順を知っている訳ではない。これもゼウスの導きによるものなのだろうか。
『認める』
互いにそう呟いた瞬間だった。光と風が拡散し、部屋に静寂が戻った。
陽奈と俺はしばらく余韻に茫然としていたが、ドアがノックされたことで我を取り戻した。
「陽奈、なんか騒がしいけど大丈夫か〜?」
そう言うと共にドアを開けて入ってきたのは陽奈の弟、悠貴だった。
歳は一つ下であり、俺たちと同じ学校に通っている。陽奈より少し高いくらいの身長で、陽奈を呼び捨てで呼び、よくからかっている。しかし本当は姉想いの優しいヤツだ。
ちなみに陽奈には大学生の兄もいるが、大学が遠いため大学の近くで下宿しているのだ。
「えっ、う、ううん、何でもないよ?」
一瞬どもった陽奈だったが、うまく悠貴を誤魔化した。
「うわ汚ね〜……泥棒にでも入られたか? それか陽奈が暴れたとか」
「そんなことしないよ! それより、私のことは陽奈お姉ちゃん、でしょ?」
「呼ぶかよ、バカ陽奈。早く片付けろよ」
「あ、悠貴っ!」
それだけ言うと悠貴はドアを勢いよく閉めて行ってしまった。