渇望-gentle heart-
正直、無我夢中だったあの瞬間のことは、今ではもう、あまり覚えてはいないのだけど。


あたし達、捕まっちゃたね。


今まであたし達を繋いでいたものが、結果的にふたりを引き離すものへと変わってしまったことは、皮肉だろうか。


散々悪いことをしたツケがまわってきたのだろうし、償わなくてはならない罪もある。


お母さんも泣かせてしまったし、大学だって退学。


全てが真っ白になった、あの日。


弁護士の先生には、初犯だし、全部を流星にそそのかされたことだと言え、と言われたけれど。


でもね、あたしそんなの嫌だったから。





ごめんね、流星。

会いたいけど、会えないね。





ハルのことも、クリスタルのことも、何とか誤魔化せて良かったと思う。


堕ちていくだけだった日々を、留置場で懐古した。


たくさんの出会いがあった中で、あたしと流星は繋がっていたね。


苦しかった日も、涙した日も、そんな中での数少ない笑顔の日だって、どれも全部覚えてる。


だから、恨んだりなんかしたくない。


流星の所為にだってしたりしない。


後悔してないと言えば嘘になるけど、捕まって、少しだけ自分と向き合うことが出来ました。


お母さんやお父さんとも、初めてちゃんと話が出来た気がします。




ただ少しだけ、

流星のことが心配なんだ。








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