青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―


「今回の件、アンタの責任じゃないんだ。これ以上もう悩むなよ。この台詞、実はヨウにも言ってきたんだぜ?」

「え……ヨウにも?」


「ああ見えてあいつ、それなりに責任を感じているんだぜ? ツルんでるダチをボコされることが、あいつにとって1番ムカつくことだしな。ンな素振り見せねぇけどな」


そういえば日賀野も同じことを言っていた。

ヨウにとっての苦痛は信頼していた仲間の裏切りと、信頼していた仲間が傷付くことだって。



もしかして俺がヤラれちまったから、あいつ、責任を感じているのか。

そりゃさ、元凶を辿ればヨウが俺を舎弟にしたことだけど、そのことでとやかく責める気になんてなれない。

舎弟になれって言われた時、キッパリと断れなかった俺にも非があるっていうか原因があるっていうか。


それにあいつ、来てくれたしな。


俺がピンチだって聞いて……駆けつけてくれた。こんな俺の為にさ。


「少しは気が晴れたみてぇだな、ケイ。さっきよりマシなツラになっているぜ」

「さっきどんなツラしていました?」

「良い男が台無しってツラ」

「良い?!」



「知らねぇのか? 男ってのは喧嘩で男前が上がるもんだぜ。アンタ男前上がったよ」



面食らってしまう。

響子さん、その言葉は反則だぜ! 言われたこともないよ、そんなこと!

熱が顔中に集まって火照っているのが分かった。

慌てて床に視線を下ろして顔を隠した、つもりだったんだけどバッチリと顔を見られた。響子さんにじゃないよ。



「おやおやこどんぶり? どーして此処だけアッチッチなのかな?」



ワタルさんに見られちゃったぜ! あはははー……うわっ、サイアック! しかも口調うぜぇ!

面白いネタを見つけたとばかりにニヤニヤと笑ってくるワタルさんに、俺は思わず逃げ腰。

すぐさまからかいという戦闘から逃げ出そうとしたけど、田山圭太は見事に失敗してしまった。



だってワタルさん、あっという間に俺の目の前に立っているんだぜ?

ちょ、逃げる隙もありゃしねぇ!


フルボッコにされた俺の体なんか気にせず、肩に腕を乗せて「みーちゃった」と口角をつり上げてくるワタルさん。スッゲェ楽しそうにニヤついてくる。


「ケイちゃーん。言葉攻めプレイに弱いっしょ。それともそういうプレイを密かに希望? イヤーンらしいんだからぁ!」

「ッ、なんでそうなるんですか!」


ワタルさん、此処はゲーセン。響子さんの前。そういうお話は宜しくないぜ!

するなら俺とワタルさんの二人だけの時、ムサイ男達だけの時に。

そう言えたら俺は男だよな! 株上がるよな! 勿論そんなこと分かっているんだぜ? 分かっているんだけど残念なことに俺にはそんな勇気ない……ワタルさん、恐ぇもん!


顔が赤くなっている自覚はあるけど、どうすることも出来ない。反論なんて持ってのほか!


そんな俺にワタルさんがニヤッと一際口角をつり上げてみせる。

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