青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
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ゲーセンから出ると日が沈みかけている。
俺はてっきり夜になっていると思ったんだけど、意外と時間はゆっくり動いているみたいだ。まだ夕暮れ時なんだってことに俺は多少ならず驚いた。
それだけ俺の中で時間が進んでいたんだろうな、濃い一日だったしな。
体に痛みが走ることを承知の上で軽く背伸びをする。
予想以上の痛みに、俺は思わず顔を強張らせた。
随分俺の身体は悲鳴を上げているようだ。
ついでに家に帰ってちゃんと怪我の手当てをしないとやばい。腕や膝から軽く血が垂れている。
なにより早いところ帰って手当てして寝ないと、俺、ぶっ倒れるかも。
「ふぁ~……ケイ……乗るか?」
シズが俺の様子に気が付いてくれたのか、バイクを指差してくる。
送ろうかと言ってきてくれているんだと思う。
でも、そんなに遠い距離じゃない。
俺は歩いて帰ると言って、シズの気持ちだけ受け取った。
俺は家に帰るけど(帰らないともう無理……限界)、シズやヨウ達は場所を変えて溜まるみたいだ。話しているところを聞いちまった。
多分、日賀野の件で駄弁るんだろうな。
ゲーセンで溜まっていても良いんじゃないかって思ったけど、休日の夕暮れの時間帯は補導員がよく見回りに来るそうだ。
まあこのゲーセン、溜まりやすいしな。補導員が目を光らせるのも分かる気がする。響子さん、未成年で煙草吸っているし捕まったら面倒そう。
「本当に帰れるか? ……送るぞ……眠い……」
「歩くくらいの元気はあるから」
「ほんっとかぁ~?」
後からゲーセンに出てきたモトが「道端で死ぬんじゃね?」と皮肉を浴びせてくる。
心配してくれているが故に……そう言ってきてくれるんだよな? 俺は信じているぞ、モト。そうじゃなかったら俺は泣くぞ、マジで。
同じくゲーセンから出て来た利二とバッチリ視線が合った。
めっちゃ気まずくて俺は目を逸らしてしまった。
三階のフロアに戻った後も、俺、利二と口きいてないんだ。極力目も合わさないようにしていたし、近寄りもしなかった。
あんな派手な喧嘩した後だし、謝るって気には今のところ、どうしてもなれない。変な意地とプライドが邪魔しているってヤツかな。
利二も同じみたいで極力俺と目を合わせないよう、俺に背を向けていた。
そうなると意地でも俺も背を向けたくなって、でも気になってチラッと利二を盗み見る……あれ? 利二のヤツ、手に缶緑茶持ってね?
俺と同じメーカーじゃね?
もしかして利二のヤツもモトに貰ったってヤツ?
うわぁつ、スッゲー気になる。かなり気になる。
どうでもいいことを気にしていた俺を余所に、利二は先にお暇するとヨウ達に頭を下げて帰路を歩き出す。
腹部を押さえながら。利二のヤツ、日賀野の蹴りを腹に二回も喰らったんだよな。
しかもその後、俺が加減無しにぶっ叩いたり蹴ったりしたんだよな。
痛い、筈だよな。
俺もお返しを十二分に貰ったけど。