青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「任せろ、ケイ。テメェは運転だけに集中しろ!」
頼もしい発言をしてくれる舎兄のために、俺はチャリのスピードを最高潮にした。
“足”は喧嘩できる奴を乗せて、はじめて爆発的な攻撃力を生む。
つまりヨウと俺のコンビは相性が最高なんだ。
集団に突っ込む俺を援護するヨウは相手に向かって蹴りを一発。
チャリは真横からの攻撃に弱いけど、攻撃される前にヨウがフォローしてくれる。
伸ばした腕で相手の首に引っ掛けたり、左フックかましたり、さすがは天下の荒川庸一。喧嘩に長けている不良だ。おかげでさほど運転に支障は出なかった。
集団を突っ切った俺はヨウにバイクの存在を尋ねる。
振り返るヨウは、
「三台見える」
まだ撒けていないことを教えてくれた。
あーあ、やーっぱ……やるっきゃないっすかアノ道。
俺だってチャリでは通ったことねぇよ。
あそこの道ならバイクも追ってこないだろうけど、この道はちょっとばかし肝が冷えると思われる。
「ヨウ、しっかり掴まっとけ! 絶対に振り落とされるな」
俺の強い警告と同時に、「おまっ……」ヨウは引き攣り声を出した。
「ばっ、馬鹿! テメェそっちは階段っ……ま、まさか!」
「だから笑えないって言っただろ?」
「マジで行くのか?! ガチでチャリが回転するんじゃねえの?!」
「本気も超本気! 映画みたいだよな! ははっ、アクション映画に出れるぞ俺等! 舌噛むなよ!」
嘘だろ、おい。
ヨウは痛いくらい俺の肩を掴んできた。
心中で十字を切って、細く段のある下りの階段に迷う事なく突っ込む。
石段に加えて緩やかだと言い難い傾斜を転げるようにチャリで前進。この場合、落下していると表現した方が良いかもしれない。
それに似た錯覚が俺とヨウを襲っている。
ドン、ドンッ、ドン――!
ぬわあああっ、ガックンガックン上下に揺れる階段とハンドル操作の難しさがやべぇ!
まじでスタントマンをしている気分なんだけど!
「ケイケイケイッ、マジで落ちるかもしんねぇ!」
「ど根性だヨウッ、ファイツ!」
ヨウが落ちないか確認しつつ、チャリの回転を防ぐためにブレーキを握って俺は運転に集中する。
タイヤがパンクしないといいけどっ、ああっ、コワッ! 恐ろしいほどコワッ! 揺れる! 視界も手も体も全部揺れるっ、良い子の皆は真似しないでくれな!
「ッ、ハンドルが取られる」
脳みそが右に左に揺れているような感覚に襲われながらも必死にハンドルを握り締めた。
俺が怪我するよりも、ヨウが怪我する方が痛手だ。
どうにかの乗り切らないと!
今まさに階段を上ろうとしていた主婦の方がアリエナイ下り方をしてくる俺等に驚き返って、咄嗟な判断で道を開けてくれる。
聡明な判断をありがとう、おばちゃん。助かりましたぜ!
さすがに人を轢かないかどうか、判断するまでの余裕はないから!
驚愕している主婦を余所に俺は最後まで階段を下り切ると、ハンドルを切って民家のコンクリート塀に激突しそうになるスピードの出ているチャリを右の足裏で止めた。
ジーンッと痛む足裏に俺は身震い。
一連の流れの中で一番痛かったかも。
今のはナイ。痛い、マジで痛い。
「ヅッ…っ」
右の足裏を地面に擦り付けて身悶えする俺。
一方でヨウがぐったりと凭れ掛かってきた。
アウチ……重いぞ、ヨウ。ついでに足の裏が痛いっ、真剣に痛いっ、痛いっ。