青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
だけどヨウはそれどころじゃないらしい。
痛みに悶えている俺を尻目に重々しく溜息をついて、もう二度とごめんだと前髪を掻き上げた。
「じゅ、寿命縮まるかと思った。ケイ、先に相談してくれね? 喧嘩よりやばいって、これ。神経磨り減ったぁ」
「言っただろ? 笑えないって」
「笑えねぇどころじゃねえ。死ぬかと思った。こんなの聞いてねぇ……」
あー確かに何が笑えないかは言っていないけど。
でもでもでもおかげでバイクの音が上で行き場をなくしている。
どうすりゃいいか分からないんだろうな。
二度としたくないけど、ぜぇえってもうしたくないけど、『バイクは階段を下りることがよっぽどの度胸が無い限り不可です』作戦は成功みたいだ。
此処からの裏道はチャリもしくは徒歩でしかいけない。
それに随分、近道にもなった。
真っ直ぐ大通りに出て目的地に向かうだけだ。
いやぁ今のアクションはマジで冷や冷やしたぜ。
此処でずっこけたらとんだお笑い種だもんな! 決意した友情の円陣の直後の怪我。笑えねぇ! 仲間には大笑いされそうだけど!
俺はヨウに上体を起こすよう頼んで、ペダルに足を掛ける。
こんなところでアクションの生還に浸っている場合じゃない。
俺達の目的は一つしかないんだからな。
ペダルを踏んで力強く漕ぐ。
静寂な住宅街を突っ切って、風を頬で感じて、髪を微風に靡かせて、大通りへ。
そこから一直線上に道をなぞる。
通行人が行き交いする中、刺客がいないかどうか警戒心を募らせながら、活気ある商店街を抜けて、ずっと先のさきのさきへ。
店の姿がまちまちに、そしてシャッター通りに差し掛かる頃、俺は商店街外れのとある一角にある地下のバー前でチャリを停めた。
スプレーで落書きされた洒落た壁と小さな衝立看板。
階段と一緒に設置されている手摺を目でなぞっていけば、階段の終尾に重量感ある木造の扉。
地獄の門に見えるのは俺だけじゃないよな。
アノ向こうに……留守じゃなかったら奴等がいる。健太を含む不良チームがいる。
「静かだな……誰もいないけど」
「ちょい待ち。連絡してみっから」
バイク組の姿が無い。
既に突撃したのか? 周囲にバイクの姿は無いけど。
俺の疑念はすぐに解消される。
ヨウが弥生に連絡して状況を確認すると、向こうも刺客に襲われているみたいだ。
今、振り払ってこっちに来ているところらしい。
バイク同士じゃなかなか決着を付けるのは難しいからな。
撒くのが一番だろ。
出しゃばらないよう、俺達は皆が来るまで待つことにした。
こうしている間にも日賀野達が出てきたらどうしよう、なんて畏怖を抱いたけど、大丈夫、一人じゃない。
俺には頼もしい仲間がいる。舎兄がいる。怖いのはきっと俺だけじゃない。
(ハジメ、仇……とってくるからな)
心中で一時離脱している仲間を想う。
お前の仇は絶対に。あの悪質画像の仕返しは絶対にしてくるからな。