青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
俺は脳内のマップを浮かび上がらせる。
東の方角には何がある?
三丁目交差点の近くスーパーの隣には郵便局。
古本屋の向かい側には文具店。
その先、その先には……駄目だ情報が少な過ぎる。
東の方角だけじゃ漠然とし過ぎて。
だけど皆の視線が俺に集中しているのが分かる。
ちょ、そんなに期待されても……幾ら土地勘が優れていると褒められても、俺はカーナビと同じで目的を教えてもらわないと進むべき道が出てこない。
必死に思考を回して考える。
思い浮かべる。
東の方角にある、日賀野達が行きそうな場所を。
「川沿いを走っているらしいよ」
弥生が新たな情報を俺に与えてくれた。
そこで利二達は奴等の姿を見失ってしまったらしい。
これ以上の情報入手は無理だと言ってきた。ってことは……俺か。俺の判断に委ねられるのか!
「ケイ……外れてもいい……何処か思い当たる節は? お前が頼りなんだ」
シズに促されて焦りに焦る。
そんなことを言われても、あいつ等が行きそうな場所なんて見当もつかない……俺は頭を抱えて、与えられた少ない情報を反芻。
三丁目交差点を過ぎて、スーパーや古本屋を通り過ぎて、川沿いを東の方角に。日賀野達も決着をつけたさそうだ。
血の気も多いから喧嘩もしたいだろうし、そういう場を選ぶなら広い場所だよな。
「ケイさん……何か、なにかありません?」
ココロに同じ質問をされる。
だから俺の頭はカーナビと同じで目的地までの道をよく知るだけの……あ、川沿い……かわぞい……待てよ確か。
よーく思い出せ。
俺は一度、喧嘩で川沿い周辺をチャリで駆けたことがあった。
沢山喧嘩を売られて、その度に逃げたけど、川沿いを走ったのは一度っきり。皆で喧嘩に行った時だった筈。
いや俺とヨウが先にチャリで到達したんだよな、その目的地。
バイクでは走れない場所だから、でもチャリならその目的地まで行けるからって。
あれは何処だ。何処だった。
どこ――東の方角にある川岸の廃工場か。
俺にとってあそこは思い出の場所だ。
俺が初喧嘩に不本意ながらも参戦した場所。
ハジメが袋叩きされた場所でもあり、日賀野と初めて出逢った場所。初めて女の子にお礼を言われた思い出の場所。
「そうか。あそこだったら、バイクも途中までしか使えないから……簡単に協定チームを呼べない。日賀野達はそこを選んだのか。
そこで決着をつけたいのか。
最後は水入らずの乱闘をおっぱじめたいのかもしれない。自分達の手で決着をつけたいから」
「ケイ、見当がついたのか?」
ヨウの問い掛けに、
「外れているかもしれないけど」
俺は躊躇しながらも川岸の廃工場に向かったんじゃないかと意見を出す。
独り言として口走っていたさっきの考えを述べて、もしかしたら川岸の廃工場にいるかもとリーダーに言う。
そしたらヨウは間髪も容れずチームメートに指示。
「今すぐ川岸の廃工場に向かう」
考えもせずに指示をするもんだから俺は頓狂な声音を上げた。
ちょ、もうちょい考えるとかさ、俺だって自信ないのに……そんな簡単に信じられても。
だけどヨウは「ケイがそう言うんだ」絶対そうだと断言。
間違っているかもしれないのに舎兄は振り返って俺に言うんだ。
「舎兄は舎弟を信じるもんだろーが。俺はテメェを信じている」
ああくそっ、少し前まで動揺してた男がキザに吐く台詞じゃないぞ、それ。
「間違っていたらカッコ悪」
俺の愚痴にも、
「その時は舎兄弟で折半だ」
なーんて吐いてくれるから、俺の立場ナッシング。
イケメンくんは何処までもイケメンくんらしい。美味しいところを掻っ攫っていくんだからなあ……もう。
分かっているさ、お前に美味しいところを奪われるってのは。
お前の舎弟して三ヶ月以上経つんだ。
分かっているよ。
お前がカッコ良いイケた不良なくらい……さ。