青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
だから前に進めない。
だったら自分だって……もうやめよう。お互いにしがらみに囚われるのは。
「テメェとセフレでも付き合えて良かった。そう思っているよ。いっちゃん嫌いな女だけどさ、傍にいると……いっちゃん安心する女だよ。お前」
敢えて好きは言わない。
だって自分にはもう、勝ち目など無いと分かっているのだから。
せめて心にでも置いてもらおうと、こうやってカッコはつけるけれど、彼女を見つめれば見つめるほど思う。
やっぱり帆奈美が好きだ。
どこかで悔しい思いを噛み締めている。
しかし、こうやって半分以上気持ちを告げられるだけでも儲け物だと思っている。
あの頃は自分の気持ちを言える機会すら掴めることなどない、と思っていたのだから。
クシャリと泣き笑い顔を作る彼女に、
「終わりにしようぜ」
ヨウはあどけない笑みを向けた。
前に進んでいいのだ、お互いに。
すると帆奈美が人目も気にせず飛びついてきた。反射的に体を受け止めたヨウに彼女は上擦った声で言う。
「嫌い、うそ。本当は、好き。昔とカタチは違う、でも貴方のこと嫌えなかった。今も好き……一番じゃないけれど」
余計な一言を付けてくる彼女に「うるせぇ」不貞腐れつつ、軽く抱擁した。
これで最後。本当に最後。自分達の関係は本当の意味で終止符を打たれた。
気持ち的にほろ苦さ半分、甘酸っぱさ半分。お互いに傷付け合った。
暴言も吐いたし、憎んだりもしたけれど、今をもって自分達は終わりを迎えたのだ。
もういい。
帆奈美は苦しまなくていい。
今度は幸せになって欲しい。
「やべぇ」
ヨウはおどけ口調で彼女に一言。
「抱き締めたら、放したくなくなった。ヤマトにやりたくねぇ。あーあー、どーしよう。このまま掻っ攫うか?」
「ヨウ。やっぱり変。いつもだったらそんなこと、絶対に言わないのに」
「変で悪かったな、ちっとだけ素直になったんだよ」
ヨウは柔和に綻ぶ
後悔はなかった。この関係に、否、この気持ちに後悔はなかった。
いつかまた別の恋をすることがあっても、帆奈美との恋は無駄に終わらない。
必ず糧になってくれる。そう、強く信じている。