鬼の火まねく赤子の声
「坊は泣いてばっかり」
 白峰に目を移すと、すっかり川に入ってしまい、着物の裾が血のようにまとわりついていた。
「白峰の坊はそんなに泣くんか」
 子供達に流されて、沖は彼女をちゃんと白峰と呼んでいた。白峰は頷くとにいと歯を見せて笑う。
そうか。この顔は猫の化け物の顔だ。
 毬を追いかけている着物の猫が、白峰の足に食らいつき血を流させているのだ。
視線を鬼火の浮かんでいた方に向けると、もうない。ただ美しい朝日が、正午の高い日に変わろうとしている。
沖は白峰のように半分口を開けて鬼火のあった所を見ていた。しばらくすると、うるさかった子供達の奇妙な歌声は消え、川の流れる音も消えていた。
「大丈夫?」
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