鬼の火まねく赤子の声
悔しいと思った。やっと思った。沖は過ごしてきたほとんどの時間を、白峰に捧げたようなものだ。その白峰は、何人分かわからないほどの姿を見せ付ける。それを、愛しいと思ってしまう。沖の意識のすべては白峰に丸ごと食われているようなものだった。
「坊」
沖が見ると、白峰は沖の方を見てそう言っていた。
「坊って俺のことなんか?」
白峰は頷く。
「俺は泣いてるんか?」
「泣き虫やからなあ」
白峰は本当に沖を恨んでいるのだろうか。愛情すら感じてしまう。
なぜ自分ではなく千鶴子なのだ。そううなった頃の白峰を思い出す。
そうか。簡単だ。
沖は白峰を引き寄せた。
「みんな知ってたんやな」