君想論 〜2人のサヤカ〜
「はぁー……」
“サヤカ”はドッと溜め息をついて天井を見る。
「虫酸が走るな……反吐が出る……癪だ……マジでムカつくよ……」
何やら物騒なことをブツブツと呟き、
「けど、清花の為だ。我慢するしかないか……」
そう言って、少し……ほんの少しだけ笑みを浮かべた。
コレでも一応、コイツが見せた中では一番良い表情だ。
いつも無愛想で短気で喧嘩っ早いヤツだが……
こうして見ると、根っからの悪いヤツではないようだな……
人を思いやる気持ちは最低限あるんだ。
[人間]としてのギリギリのボーダーラインは難なくクリアしている。
「随分と“清花”を大切にするんだな……お前」
何気なく口から出た言葉に対し、またしても鋭い視線でオレを睨んだ。
「当たり前だ。清花を傷つけようとするヤツはあたしが許さない」
……そう言えば、初めて[梧 清花]の豹変を見た時、柿金が“清花”に対して思いっきりタックルしたんだっけな。
『主動権の移動は2人の話し合いによって決めているが、[強い意思]があれば、相手から主動権を強制的に奪い取ることができる』
(P.192より)
つまり、“清花”の身体を傷つけられたことにぶちキレて、あんなことになっちまったワケか……
「清花はあたしの全てなんだ。清花の為なら、あたしは何だってするさ……」
「あたしはその為だけに生まれたんだから」
「……………」