チャンピオン【完】
一発芸って。
アメリカ帰り、芸人だったの?
彼が帰国してからこのビルの中に一緒に住んではいるが、私はまだ口を聞いた事すらない。
だって怖いんだもん。
身体もデカけりゃ、態度もデカく、他の選手やら練習生とも慣れ合いやしない。
その上背中にでっかい逆十字の刺青背負ってると来た。
恐ろしい。
シュッと現れた黒子の練習生が、兄貴と同時に立ち上がった貴丸に、黒い金物を手渡した。
胸の前でたいして構えもせず、グニャリとそれを彼は丸めた。
「「おぉおおおおおお!!」」
会見場の記者さんたちから上がった歓声のテンションは上向きだったが、それを見た私のテンションは急降下していた。
野蛮だ、野蛮すぎる... !!
無表情に彼は黒い塊を小さく畳み続けている。
この貴丸って男、怪物か何かに違いない。