クロス
そしてそうと決めたら、なるべく早く行動に移したかった。卒業まで、2年もあった。

美大の学費だって、あたしがネイリストを目指すのであれば、無駄になってしまう。
ネイルの専門学校に通うのであれば、その学費だって稼がなければ。

あたしは、大学をやめて、働きながら学費を貯めるつもりでいた。
大学進学と、高校進学を控えた妹達だっている。せめてあたしが自立すれば、家計もグッと負担が減るはずだ。
両親にこれ以上迷惑をかけたくなかった。




あたしが何をどう言っても、
大学を中退する事を、父も母も頑として認めなかった。

「勉強できることはしっかり身につけて、大学は卒業しなさい。卒業までに、全てを決めなくてもいいから、ゆっくりと考えなさい。まして、子供が、お金のことなど心配しなくていい」

あたしは、ごめんなさい、ありがとうと言って頭を下げたまま、止まらない涙を何度もぬぐった。

「あんた、ネイリストになったらサービスしなさいよぉ」

あたしは何度も頷いた。


妹達も、かなりの援護射撃をしてくれていた、と後からきいた。ちなみに、サービスしろと言った妹達は、頭をひっぱたいておいた。

家族は、あたしの宝物だ。
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