➤うたた寝びより
一瞬言葉がでなかった。
透き通った綺麗な声。
男子でこの声はうらやましい。
心が潤うようなそんな声だった。
「いつも、ここ座ってるの?」
話が続くとは思ってなかった。
「うん」
すると、どうして?と目で訴えかけるように、私をじっと
みつめた。
「夕日が綺麗なんだよ」
理由はそれだけではないけど。
これが一番の理由。
「夕日好き?」
「うん。とっても」
「俺も、好き」
そうして、外をながめた。
でも、今日はあいにくの曇り。
雲と雲との間から少し漏れる夕焼けの光。
すごく優しい光。
「今。なんて思ってる?」
「ん?」
私は、何を言ってるのか分からなくて。
「曇ってるでしょ?」
あぁ。そういうことか。
「そうだね。曇ってる。でもさ、私はこの空も好きだよ。」
そういって、そっと微笑む。