いばら姫と王子様 ~AfterDays~

なあ芹霞。


お前があの時、自分から俺にキスしたのは、どういう意味だったんだ?


もしかしたらという自惚れだけが、今の俺の強み。


もう――想うだけでは我慢しきれないんだよ。


嫌なんだ、こんなもどかしい関係は。


変わらねばと思う。


俺は何1つ変われていないことに、気づかされた。


8年前。


俺の目の前で真紅に染まった芹霞を、俺の漆黒色で繋ぎ止めた。


芹霞が例えどんな姿になりはてたとしても、俺は芹霞を永遠に俺の傍に留めておきたかった。


それは俺のエゴだということは判っている。


俺は俺の全てを投げ打ってでも、芹霞を手に入れたかった。


ただそれだけだったのに。



あの時、芹霞は。


俺の前で。



そうした俺の想いの結晶を、自らの胸から引き抜いた。



あの時感じた絶望感。


繋がりが…絆が断たれたと感じたあの時。


俺には、何も残る物がないことを知った。


芹霞と共に散った、俺の築いてきた自信。


芹霞の冷たい身体を抱くだけだけしか出来ない、傀儡のような俺を救ったのは、またもや芹霞の血の繋がる姉で。


俺は、8年前と変わらず、何1つ自分の意思で動くことが出来ない。


芹霞がいなければただ泣き喚くしかできない、子供の殻を脱ぎ捨てられない俺。


泣いて泣いて泣いて。


誰かが手を差し伸べてくれるのを待っているだけの俺。


待っているだけでは、芹霞は横から掻っ攫われてしまうと、


気づいた時には煌も玲も大人びた顔つきをしていて。


正直――俺は焦っている。


露呈してしまった俺の弱さと、また芹霞を喪失した時の恐怖が、俺を必要以上に怯えさせる。


誰にも渡さない。


だけど芹霞が俺を選ばなかったら?


それを考えること自体、俺には余裕がない表れで。


何か、繋がりでももたなければ芹霞が離れていきそうで。


芹霞は、もう俺なしでも生きれるようになったのだから。


俺は追いかけるしか出来ないんだ。

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