さよならさえも、下手だった
ドアがゆっくりと閉まって肩の力を抜くと、夜十も同じようだった。
罪悪感に満ちたような顔で私と目を合わせたかと思うと、すぐにそらす。
「悪い」
薄く開かれた唇からは、ただそれだけがこぼれた。
《どうして?》
メモ帳に素早く書いて返すと、
「…顔」
そうつぶやいて私の頬をなでる。
そのてのひらは、殺し屋とは思えないぐらい優しかった。
触られてようやくさっきの痛みがよみがえってくる。
痛さに顔をしかめると、夜十も私と同じしかめっつらをしていた。
首を傾げて顔を上げ、がんばって夜十と目を合わせる。
殺し屋とは思えないような哀しい目だった。
私がもつ殺し屋のイメージと彼は、ことごとくかけ離れていた。