さよならさえも、下手だった
そう思いながら歩いていると、不意に夜十が呟いた。
「野宿じゃないから、安心しろ」
…え。
びっくりして夜十の方を振り仰ぐと、
「顔に出てんだよ」
相変わらずの無表情だったけれど、さっきよりもその無表情が優しく見えるのは目の錯覚だろうか。
殺し屋なのに、ね。
何だかおかしくなってしまってくすくす笑うと、彼は不愉快そうに眉をひそめた。
「何だよ」
ごめんなさい、バカにしたわけじゃないの。
ただ、こんなにあたたかな世界を知ったのは初めてだったから、少しだけ涙が出そうで。
泣きたくないから、笑っただけ。
…それだけだよ。