さよならさえも、下手だった
お風呂を出ると、夜十の服が置かれていた。
その上には私のメモ帳の切れ端が乗っていて、「着とけ」と短い一言。
確かに私は手ぶらで荷物を何も持っていなかった。
袖を通した彼の服は着古されたやわらかさがあって、少し血のにおいがした。
私には長すぎる袖と裾をまくって出ると、夜十は眠っていた。
けれど寝顔すらも張り詰めていて、ちっとも安らかな寝顔じゃなかった。
夜十に近寄ったそのとき。
ガチャ
重い音と共に、私の心臓をぴったり狙って銃口が突き付けられる。
「…あ?あぁ、悪い」
夜十がうっすらと目を開け、状況を理解するとすぐに銃を下した。
「驚かしたな」
悪いと思っているのかいまいちよくわからない顔でそう言って、ゆっくりと身を起こす。
夜十にとってはこれが当たり前の状況なんだ。