さよならさえも、下手だった


ちょっと思案してから、私はメモ帳を夜十に差し出す。

《私の親から取ったお金は?》


できるだけ失礼な表現にならないように気を使った。
だって私は親が殺されようがお金を取られようがどうでもよかったから。

…なんていうのはあまりにも薄情だろうか。


夜十は少し困ったような表情で私を見て、それからうっとうしそうに舌打ちした。


「俺が稼いだ金は大体刹那に取られるよ」

そう言って背中からベッドに倒れこみ、大きくため息をつく。

「いつものことだ」


雇われ者の苦悩だよ、と疲れ切った顔で目を閉じた。

私はその横に、

《お風呂行ってきます》

とだけ書いたメモ帳を残してお風呂の方へ向かった。


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