さよならさえも、下手だった
音都:追う者と去る者


夜十が部屋を出てから私は、独りベッドの上でうずくまっていた。
どうしていいかわからなかった。

けれど独りぼっちになった途端に吐き気がするほどドロドロして嫌な物が体中を駆け巡って、私は窓の外に見えた夜十の背中を追いかけることに決めた。

付いてくるなと言われたから大分距離を開けて、尾行するように付いて行った。





「今回の依頼人は、あんたか?」

人気のない公園の噴水前で夜十が男の人に話しかけるのを、物陰から眺める。

「ああ、そうだけど」


そう言って笑った依頼人らしき人はとても殺し屋に依頼をしてくるような人には見えなくて、驚いた。

殺し屋に依頼をするのは、もっと狂気と憎悪を全身にまとったような人だと思っていたから。


「誰を殺せばいい?」

私だったらたとえ依頼したとしても、そんな風に質問されたら依頼を取り消してしまうかもしれない。

それぐらい夜十の物言いは率直で無駄がなかった。



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