屍都市
「雄大君の体を押さえてください!」

唯一人、幸羽だけが行動に移っていた。

履いているスニーカーの靴紐をほどき、手首までのぼって来ている寄生虫の侵入した雄大の腕…その肘辺りにきつく縛り付ける。

こうして圧迫する事で、寄生虫が心臓に近づくのを遅らせるのだ。

「理子ちゃんと純さんは雄大君が暴れないように押さえて!山田さんは何か明かりになるようなものを!早く!」

「は、はいっ!」

「ラ、ライターなら持ってます~っ」

幸羽の指示に従い、山田と理子が動き出す。

その間に幸羽は、学校の保健室から確保してきた薬品や道具を準備した。

消毒用アルコール、ピンセット、カッターナイフ、包帯、ガーゼ。

まず消毒用アルコールをガーゼに染み込ませ、雄大の腕を拭う。

カッターナイフの刃は、山田からライターを借りて炙って熱消毒したあと、消毒用アルコールでよく拭き取った。

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