屍都市
「幸羽ちゃん!」

純が幸羽の背中に呼びかける。

まさか…。

もし純の想像している最悪の事態が現実になっていたとしたら、彼女は幸羽を許す事ができないかもしれない。

「……」

幸羽は無言のまま振り向く。

血の飛び散った頬、玉のような汗の浮かんだ額。

手にしたピンセットには。

「……!」

おぞましく体をうねらせる、醜悪な蟲が摘まれていた。

「寄生虫の摘出に成功しました…雄大君は気を失って眠ってます…」

< 222 / 241 >

この作品をシェア

pagetop