屍都市
しかし、穏やかな時は長くは続かない。

「……?」

最初にそれに気づいたのは純だった。

「ねぇ…何か聞こえない?」

「え?」

純に言われて理子が、山田が、幸羽が耳を澄ませる。

…確かに何か聞こえる。

遠くから、地上から聞こえる音。

低く、長く鳴り響くそれは、サイレンのようだった。

不気味に地の底から湧き上がるようなサイレン。

訳もなく、その音は生存者達の不安を煽り立てた。

< 228 / 241 >

この作品をシェア

pagetop