とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
「来たか、黒崎。
あれ?あんたも一緒だったのか。」
ガクは忍を見て「あん時は悪かったな」と謝った。
そして以前と同じ部屋に通されるとソファに忍と座った。
「今虎太郎がお前の妹が付き合ってた集団に紛れ込んでるんだ。
後で合流する予定だ。」
「紛れ込んでる!?
だっ…大丈夫なのか!?」
「ん。大丈夫だろ。
ところで何か分かったか?」
「あぁ。そうだった。」
ガクは膝に片肘を付いて少し前に身を乗り出した。
「被害者が犬連れてたって話、聞いたか?」
「あぁ。最初の被害者は確か犬の散歩中だったな…」
「最初の被害者?何言ってる…
“被害者全員”だぜ?
」
全員!?…偶然か?
「しかもよく似た“真っ黒なラブラドール”だ。
全員だぞ…不自然だろ?」
「“真っ黒”…だと?」
その犬が“グリフォン”だったとしたら…
真っ黒なグリフォンの主は…
「…ヤバいな…」
『“ネメシス”の馬か…』
俺の表情の変化を読み取った忍は眉をひそめた。
「何?」
「忍はグリフォンを知ってるか?」
「大学の講義であったわ…
“七つの大罪”の一つに出て来たかも…
伝説の生き物だっけ?」
「“傲慢”の象徴だ。
しかも漆黒のグリフォンの主は…」
「…ちょっ…ちょっと待て!
一体何の話をしてんだ!?」
ワケの分からないと言った感じで混乱気味のガクを見た。
「ガク。悪魔を信じないお前に理解しろってのも無理かもしれんが…
その犬は“使い魔”だ」
「…じょ…冗談だろ?」
「ガクさん。
悪魔を信じてないなら…
“天使”は信じる?」
「お…俺は現実主義だ!
そんな非科学的なの信じねーよ!」
「…右京。」
忍は俺を見た。
…ヤレって事か…
ふぅと溜め息を付くと「わーったよ」と呟き上着を脱いだ。