とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
フワリと屋上に着地すると、そっと忍を下ろした。
「…4階建てなのに…」
「このくらいなら覚醒しなくてもイケるって。」
虎太郎はどこだろうか…
『だいぶ“力”が戻ったな…
右京。ハニエルは“千里眼”を持っている。
召還者が同じ建物にいるなら発動するはずだ。』
「なるほど。
早く合流した方がいいな…」
「右京、鍵がかかってる」
「下がって!」
屋内へ続くの扉に腕を突き出し、軽く指を鳴らすと鍵穴からボン!と音がした。
「…壊したの!?」
「壊れてたって事で…」
俺は扉を開けて忍と階段を駆け下りた。
丁度3階から2階に下りようとした時、女の怒鳴り声が聞こえた。
「こっちか!?」
2階の廊下に来ると風を感じた。
導かれるようにして角部屋の前で立ち止まった。
さっきと同様に指を鳴らすと軽い衝撃音と共に扉が開く。
「…また!?…」
忍が蒼白になっていたが気にせず部屋に侵入した。
まだ昼過ぎなのに窓にはカーテンが引かれており室内は薄暗かった。
目の前にハニエルの白い羽根が見えた。
その向こう側には小柄なボブカットの女がゆらりと立っていた。
「…え?…美鈴?」
「!!…しのぶ…」
その女は痩せ細ってはいたが、紛れもなく忍の友人だった。
『「お前が召還者か?」』
「そうよ!私が召還したの」
「なんで!?…なんでなの!?」
忍の言葉に美鈴はフッと笑った。
「忍にはわからない…
なんでも持ってるあなたには!!
友人も…恋人も…あなたは何でも持ってる!
私には“あの方”しか…
全て“あの方”の為!!」
…“あの方”?
『「“あの方”とは誰だ?
…何を企んでいる…」』
『ウリエル様…この女、もしやルシファー側の…』
ハニエルが俺にそう言うと、美鈴の気味の悪い目がギロリと動いて俺を見た。