とある堕天使のモノガタリ ~INTROITUS~



上昇し海面に顔出すと、砂浜まで泳いだ。

浜に上がり銀髪をひと振りして忍達の元に戻った。


アイコもすぐ目を覚ましたらしく、ホッと胸を撫で下ろす。

みんなも俺の顔を見ると安堵したみたいだった。


「潜ったまんま上がって来ないから、俺てっきり…」


涙目の陸に微笑んで長めの黒髪をくしゃっと撫でた。



「勝手に殺すなよ。

言ったろ?“忘れ物”を取りに行くって。」

「海の中に何か落としたのか?

見つからねーだろ…」

「あぁ、“海”じゃなかった。

だが“海岸近く”にあるらしい。」


俺の言葉に虎太郎は瞳を鋭くさせた。



「んーじゃあ旅館かなぁ~」


寛二の言葉が気になった。


ここに来る前にロビーで陸が言ってなかったか?



“部屋から海岸が見える”と…




「虎太郎!!」

「りょーかい!」


何も言わなくても虎太郎は理解したようだ。



旅館に走り出した虎太郎を見送ると忍に耳打ちする。


「召還者を探してくるからみんなと一緒にいろよ」

「右京…」

「大丈夫だから」

「でも…」


心配そうに見つめる忍に「わかったよ」と溜め息を付いた。


「寛二。忍と“忘れ物”探しに一旦旅館戻るな?」

「おっけ~!俺達待ってるわ。」



俺は忍の手を引いて旅館に向かった。


「忍、こっち!」


俺は道を外れて近道をすると旅館の裏側に回った。


「こっちからは入れないよ!?」

「ん。上から行くから掴まってろよ!」


そう言って忍を抱きかかえると風を巻き起こし、思い切り跳躍した。


< 148 / 405 >

この作品をシェア

pagetop