とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
上昇し海面に顔出すと、砂浜まで泳いだ。
浜に上がり銀髪をひと振りして忍達の元に戻った。
アイコもすぐ目を覚ましたらしく、ホッと胸を撫で下ろす。
みんなも俺の顔を見ると安堵したみたいだった。
「潜ったまんま上がって来ないから、俺てっきり…」
涙目の陸に微笑んで長めの黒髪をくしゃっと撫でた。
「勝手に殺すなよ。
言ったろ?“忘れ物”を取りに行くって。」
「海の中に何か落としたのか?
見つからねーだろ…」
「あぁ、“海”じゃなかった。
だが“海岸近く”にあるらしい。」
俺の言葉に虎太郎は瞳を鋭くさせた。
「んーじゃあ旅館かなぁ~」
寛二の言葉が気になった。
ここに来る前にロビーで陸が言ってなかったか?
“部屋から海岸が見える”と…
「虎太郎!!」
「りょーかい!」
何も言わなくても虎太郎は理解したようだ。
旅館に走り出した虎太郎を見送ると忍に耳打ちする。
「召還者を探してくるからみんなと一緒にいろよ」
「右京…」
「大丈夫だから」
「でも…」
心配そうに見つめる忍に「わかったよ」と溜め息を付いた。
「寛二。忍と“忘れ物”探しに一旦旅館戻るな?」
「おっけ~!俺達待ってるわ。」
」
俺は忍の手を引いて旅館に向かった。
「忍、こっち!」
俺は道を外れて近道をすると旅館の裏側に回った。
「こっちからは入れないよ!?」
「ん。上から行くから掴まってろよ!」
そう言って忍を抱きかかえると風を巻き起こし、思い切り跳躍した。