とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
翌日から忍は夜稽古に顔を出すようになった。
長くストレートの髪を一つに束ね、ジャージ姿で現れると正座をして「よろしくお願いします」と真剣な眼差しで俺に言った。
俺は彼女だからと言って手を抜かないよう一つ一つ丁寧に厳しく忍に護身術を叩き込んだ。
中学に上がるまで合気道を師範から教わっていた為か、基本的な動きはすぐにマスターした。
更に驚いたのは集中力の凄さだった。
やはり女性の彼女は体力が無いものの、一度教えた事はすぐに習得していった。
そして納得がいくまで徹底的に稽古を繰り返す。
多くの門下生を見て来たが、ここまで熱心な門下生はめったにいない。
俺はあの師範の血筋なのだと改めて理解した。
忍が剣術の稽古を始めてから数週間が経ち、寒さも増した12月のある日の夜の事だった。
その日俺はバイトから帰ると部屋に忍が居ない事に気付いた。
たまにある事だが、いつもなら大抵こういう時俺の部屋に居るはずだった。
だが、俺の部屋にも忍は居なかった。
一瞬焦ったがすぐに彼女がどこに居るか分かった。
おそらく忍は…
階段を静かに降りて俺が向かった先は道場だった。
中から漏れる灯りにホッとし、入り口から覗くと木刀を振るう忍の姿が見えた。