とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
俺は密かに遥か昔のノアとの会話を思い出した。
堕ちる前に彼は俺に言ったんだ。
「お前が神に堕とされたら、俺がお前を拾ってやる。
俺を助けてくれたみたいに、お前を助けると誓うよ。」
ノアは「それが人間だ」と優しく笑った。
彼があまりにも真っ直ぐな目で俺に言うから…その言葉を信じてみたくなったんだ。
『じゃあ…いつか人間になれたら…よろしく頼む』
そう俺が言うと「待ってるよ」とノアは答えた。
現世の今、まだ人間ではないが彼は…否、彼の魂を持つその人物は空っぽだった当時の俺を拾ってくれた。
ノアとソックリな笑顔で「大丈夫だ」と俺の頭を撫でてくれたんだ。
彼は俺を覚えていたのだろうか?
そう考えて俺はひとり吹き出した。
まさかな…でも魂は覚えてたのかもしれない。
「なにひとりでにやけてんだ?」
「別に。ただの思い出し笑いだ。」
虎太郎は教えろとしつこく絡んで来たが、俺は話すつもりは無かった。
「じゃあ、夕方だから遅れんなよ!」
そう手を振って俺はその場を後にしたのだった。