とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
堕ちる天使は主の逆鱗に触れる行為をした者だ。
俺も結果としてその一人って事になるのだが…
「ウリエル様は異例だよ。
自ら堕天を望んだんだから…」
「…俺は堕天を望んだ訳じゃない。
人間になりたかったんだ…。」
「ウリエル様らしい。
昔は理解出来なかったけど…今なら俺にもわかる。」
虎太郎は優しく笑いながらそう言ってくれた。
昔助けた人間の事を思い出した。
あの人間も…ノアもそんな顔で笑ってたな…
ノアについては人間界では色んな話が語られている。
地上で増えすぎた人間の悪行を見た主が、その人口を減らす為大洪水を起こした。
ある書物では、従順なノアだけ助ける様に俺が指示されたとあったが、実際は俺の独断だった。
その為、結果として堕天させられたが悔いてはいない。
ただ、俺は人間にはなる事を許してもらえなかった。
今だって人間のフリをしているに過ぎない。
「人間になんてなれねーのかな…」
「主はウリエル様ほどの力の持ち主を人間にしてしまうのが惜しいんだろ…」
ウリエルの言ってた“宿命”とはこういう事なのだろうと、ただ漠然と理解した。
きっと人間になんてなれないのかもしれない。
でも…
「でも…俺はその“宿命”に抗ってみたい。」
虎太郎が一瞬驚いた表情をしたが、微笑んで俺の髪をワシャワシャと両手で撫で回した。
「そんなワガママ言うのは人間くらいじゃないのか?」
「…かもしれないな…」
そう言って俺達は笑った。