とある堕天使のモノガタリ
~INTROITUS~
俺から離れ、窓辺から見える夜空をバックに忍は俺を真っ直ぐ見据えた。
「…茶番は終わりだ。お前は誰だ。」
「…ふふ…忍よ?
あなたの最愛の…」
「ふざけるな。何が望みだ。」
「私の望みは…あなたを手に入れる事よ。…堕天使さん。」
そう妖しげに微笑むと忍は俺の頬を綺麗な細い指で撫でた。
それを冷たく見下ろす俺に忍はクスクスと笑った。
「怖い顔。」
「生まれつきだ。」
「昔はもっと優しい顔つきだったじゃない。」
「いつの話だ?」
「まだ…あなたが天使だった頃よ。
…あの時も私を拒んだ…」
俺がコイツを拒んだ?
…遠い記憶を辿る…
ああ…そんな事あったな…
「お前…アスタロトか…」
「嬉しい!覚えててくれたのね!」
「その執念深さと強欲さが苦手だった。」
「ふふ…でもこの身体ならどお?」
忍は…否、忍を支配したアスタロトは俺に顔を近付けた。
「キスしてよ。」
「相変わらず欲の強いヤツだな…」
「出来るでしょ?私、忍よ?」
忍にならもちろん出来るが、コイツは忍じゃない。
「忍から出ろ。」
「イヤよ。そんなに出てって欲しいなら力ずくでやってみたら?」
俺が手を出せないのをいい事に自信たっぷりの表情で俺を見つめた。