君が教えてくれたこと
由梨のお母さんから連絡があったのは、それから数週間後のことだった。
「お母さん」

「あら、優ちゃん。ごめんね。早く来て貰っちゃって」
いつもの笑顔とは少し違っていた。
今日は、由梨の検査結果が出る日だ。
「優ちゃん、こんなこと本当は頼むことじゃないんだけど、検査の結果、一緒に聞いてくれないかしら？」

「いいんですか？」

「お父さん、仕事でどうしても来れなくて、一人で聞くのもね。どうせ、優ちゃんにも伝えなきゃいけないんだし。病院の先生には、私から行っておくから」

「はい。解りました」
個室に通された。

少し待たされて、病院の先生が、カルテを持って来た。
「お母さん。娘さんですが、もう少し詳しい検査をして見る必要があります」
先生は、カルテを見直しながら、ゆっくりと話した。
「まだ、ハッキリとしたことは言えませんが」
三十分近く説明をしていただろうか。
全然、頭に入らなかった。
病室に戻ったお母さんは、僕と何の口裏合わせもなく、由梨に笑顔でこう言った。
・・よかったね。
・・大丈夫だって。

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