君が教えてくれたこと
「お姉ちゃん!」

「唯ちゃん、おはよう」

「一緒にお部屋戻ろうか?」

「うん」
・・どんぐりころころどんぐりこ
「唯ちゃん、この曲好きなの?」

「なんで?」

「いつも歌ってるから」

「この曲ね、ママが寝る前にいつも歌ってくれるの」

「そうなんだ」

「ママね、すっごく歌上手なんだよ」

「そっかぁ、子守唄なんだねぇ」
「あれ、お兄ちゃんは?」

「優?…学校だと思うよ」

「学校行ってるんだ。あっ、唯ね、手術の日決まったんだよ」
そういえば、唯ちゃんの病気のことを聞いたことがなかった。
「いつ?」

「来週の金曜日!」
その日は、花火大会だった。
「花火大会・・」

「まったく先生ったら、どうして花火大会の日にやろうなんて思ったんだろうね」

「日にち、変えてもらえないの?」

「唯ね、もうすぐ死ぬの」

「えっ?」

「唯の病気は、治療法がないんだって。だから、手術も研究の為。パパやママは、私に隠してるけどね」
死ぬと知ったとき、私はこんなに笑っていられるだろうか。

・・あの時はただ、誰にも見つからない様に、ずっと泣いてたのに・・

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「ごめん。ごめんね」
涙が、急に溢れて止まらなくなった。

頑張ってなんて言えなかった。

ただ、抱き締めてあげることしか出来なかった。
唯ちゃんには、友達が沢山居るよ。

優に、岡田くんに、幸太朗くんに、真由美に律子。
皆、みんな、唯ちゃんの仲間だよ。

あなたは、独りじゃないからね。

私が傍に居るからね。

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